- 堀田圭江子/音楽療法セラピスト®、音楽療法士、産業カウンセラー
- 洗足学園音楽大学 声楽家卒業。高校教員を経て音楽療法士となる。
25年以上の音楽療法の臨床経験を生かし「音楽療法セラピスト®養成講座」を主宰。
音楽療法セラピストを志す後進の育成にもあたっている。
こんにちは、堀田です。
本日は嬉しいことがあったのでそのお話しをさせてください。
ある特別養護老人ホームに入所している70代女性がいます。
彼女は10数年前から脳梗塞のため左マヒ、失語症の方です。
嚥下もうまくいかなくなったため、胃ろうにしており
いつもリクライニングの車椅子を使用されております。
その方は
私のセッションには2010年から参加されていますが
今まで自発的な発語がなく
彼女の声を聞いたことは一度もありませんでした。
セッション参加当初は
お名前を呼んでも、話しかけても全くの無反応でした。
その後
お名前を呼んだり、
◯◯は好きですか?と聞いて
好きであれば「コクン」と首を立てに振るようになりました。
そして
「太鼓のリズムを真似して叩いてください」というと
そのリズムを正確に叩けるようになりました。
この時点で
彼女の普段のお世話をしている介護職の方たちは
「◯◯さん、太鼓叩ける!!しかも真似できる!!」と大喜びでしたが、、、、。
さらに
セッションで自己紹介の際
彼女の隣でサポートする男性スタッフが「◯◯さんですか?」と呼ぶと
わざと返事をせず、何度もその男性スタッフに名前を呼んでもらい
そして「ニヤリ」と笑うという行動が出現しました。
隣でサポートする男性スタッフを困らせては
「うふふ」と笑うその姿はまるで女子学生のようでした(笑)。
そんなことがここ数ヶ月続いていたのですが、
今月のある日、1件のメールが私に届きました。
「先生、◯◯さん、今しゃべりました!
自分の名前いったんです!!!!!!」
という施設スタッフからの喜びメールでした。
「えっっ!!◯◯さんが?うそでしょ?」と
私はにわかに信じる事はできませんでしたが
スタッフに確認したところ、間違いありませんでした。
私の中では
もう何年も声も出していなかった◯◯さんがしゃべるって
あり得ないと思い込んでいました。
しかし
先日、私もご本人にお会いし
「声を聞かせてくれてありがとうござます。
これからいっぱいお話したり、歌いましょうね。」と言うと
「はい」と笑顔で答えてくれました。
私は胸がいっぱいになりました。
彼女の姿を通して、
これからも
実は
彼女が話せるようになったのは、
偶然ではなく
その理由があると私は考えています。
その理由については次回の記事で解説したいと思いますが、
音楽の知識だけではく
失語症の正しい知識や、脳梗塞や脳出血についての基礎知識を
学んでいることは必要だと思います。
そのへんの詳しいお話は
今度の「脳血管性障がいの音楽療法」でいたします。
今日は嬉しいお話しをご紹介させていただきました。
何かを感じていただけましたら二重の喜びです。
感謝をこめて。
音楽療法セラピスト 堀田圭江子