- 堀田圭江子/音楽療法セラピスト®、音楽療法士、産業カウンセラー
- 洗足学園音楽大学 声楽家卒業。高校教員を経て音楽療法士となる。
25年以上の音楽療法の臨床経験を生かし「音楽療法セラピスト®養成講座」を主宰。
音楽療法セラピストを志す後進の育成にもあたっている。
こんにちは、堀田です。
さて本日は、「回想法と音楽療法」についてお話しします。
高齢者の領域でお仕事をされている方は、
回想法や音楽療法といったキーワードを耳にしたことがおありかと思います。
私はいつも音楽療法のお話をさせていただいておりますが
実は音楽療法の中で回想法の一部を実践していることもあります。
回想法とはどのようなものか、簡単にご紹介します。
1963年アメリカの精神科医バトラーによって提唱された心理療法です。
高齢者が老いの繰り言として疎まれていた思い出を語る行為にも
意味があると考え、1対1やグループで昔のことを語るものです。
回想法では
個別性を大切にし個人の人生と語りに焦点を合わせ、
じっくりとその人に向き合い、やりとりを展開していきます。
ただし実施するには
- 対象者に向かない状態の方もいらっしゃることを知っておく
(重度の認知症の方や過去に辛い経験をお持ちの方) - セラピストはコミュニケーション能力が必要
- 事前に対象者についての情報を把握しておく
(性格、出身、職歴、家族構成、生活環境、過去の経験など) - 対象者とセラピストの信頼関係を築いておく
- セラピストは過去を語る意味を認識しておく
- 現実の生活にどのように活かすかの観点を持つ
などの準備及び注意することがあると考えられています。
そして、その効果としては
- 表情がやわらかくなる
- 認知症の予防や進行の抑制
- 自尊心の向上
- 対人交流の改善
- 抑うつ感の改善
- 人生に対する肯定度や満足度の向上
- 終末期の方の死への恐怖の軽減
などがあげられるそうです。
なるほどなるほど。
と、ここで
音楽療法との共通点も多いことに気づきました。
例えば
「対象者理解が必要不可欠」であること。
クライアントさんと向き合う際には、
その方がどのような方かを事前に理解しておくことは
とても大切なことですよね。
音楽療法では、言語コミュニケーションがはかれない方も多いので
その方がどのような音楽が好きなのか、どのような暮らしをされていたのかを
直接ご本人にお聞きすることが難しい場合もあります。
ご家族や介護されている方から情報を集めることを
丁寧にやっておくことが必要です。
また
セラピストとクライアントさんは信頼関係がないと
治療は進まないのは、皆さんよくご承知のことだと思います。
そして
私もいつも大切にしていることは
「現実の生活に療法をどのように活用していくか」という観点です。
音楽療法の場面では発語が増えたり、笑顔が出たり、
体がよく動いたり様々な反応がでます。
しかし
その反応をその場だけで終わらせてしまうのはもったいないことで、、、、
その反応を
日常の生活にいかに反映させていくのかが
音楽療法を実施する意味だと思うのです。
そのためには
クライアントさんを正しく理解し
治療目標を設定し
適切なプログラムを組んでいくかがとても大切になります。
いつもセッションして実感していることは
高齢者のクライアントさんは実にお一人お一人が個性的であり、
見た目では計り知れない力をお持ちだということです。
その力を
せめて音楽療法の場面で思う存分発揮していただけるよう
サポートをしたいものだと思っております。
認知予防のための音楽療法や
認知症の進行を抑えるための音楽療法についての
さらに詳しいお話しは「高齢者の音楽療法1・2」でしています。
よろしければいらしてください。
では、今日はこのへんで。
音楽療法セラピスト 堀田圭江子