- 堀田圭江子/音楽療法セラピスト®、音楽療法士、産業カウンセラー
- 洗足学園音楽大学 声楽家卒業。高校教員を経て音楽療法士となる。
25年以上の音楽療法の臨床経験を生かし「音楽療法セラピスト®養成講座」を主宰。
音楽療法セラピストを志す後進の育成にもあたっている。
多動でじっとしていられない認知症の女性が
音楽療法に参加し、落ち着きを取り戻したお話をします。
ある高齢者施設に入所されている
Aさんという90歳代の女性で認知症の方。
その方は
普段の生活では3分とじっとしていることができません。
例えば
部屋から部屋へ入っては出たり
置いてある物を意味なく動かしたり
他の利用者さんにおせっかいしたり
といつも動いているそうです。
そんな状態が続き
転倒することもあったため
施設職員さんからのオーダーで
音楽療法に参加となりました。
音楽療法への初めての参加からその後の様子
初回のセッション
さて
そんなAさんの初回セッションは
と言いますと、、、
ご自分の名前もはっきりおっしゃり
セラピストの説明をよく聞いたり
他の方がどのように行っているかを
集中して見たりしていました。
そして
なんと最後まで1度も立ち上がることなく
座っていらしたのです。
なので
前情報とはかなりの違いに
驚いたほどです。
数回セッションに参加後
そしてその後も
数回セッションに参加されていますが
最後まで座っていることができています。
さらに
歌唱されるときには大きな声で朗々と歌われ
他の参加者の方とも親しく会話したり
「ここに来られて嬉しい」と
自分の気持ちまで話されるようになりました。
その様子を
Aさんのフロアーの職員さんにお伝えすると
「そう言われたら、椅子に座っている時間が増えました」
というコメントをいただけました。
ということで今後も
セッション参加を継続し
行動の変化を促していくことに
なっています。
多動だった認知症の女性が落ち着きを取り戻した3つの理由
ではここで
Aさんの行動が変化した3つの理由を
あげてみたいと思います。
1つめは
・環境が整備されている
音楽療法のセッションを行う際には
いつも
- 同じ参加者
- 同じスタッフ
- 同じ場所
- 同じ時間
です。
そのためAさんは
場所や参加する人の顔などを
記憶しやすかったのではないかと考えられます。
認知症の方にとって
「見たことがあること」や
「知っていること」は
安心や自信回復につながることは
よく言われていることです。
2つめは
・行うことが明確である
セッションでは
目的を持ったプログラムを実施します。
そのため
プログラムはシンプルであり
セラピストの指示や説明も明確です。
セラピストの明確な指示や説明があるので
クライアントさんは迷うことなく
自分の行うことがわかり
参加しやすくなるのではないでしょうか。
そのため
セッション中プログラムに集中し
立ち上がりや動き回ることがないのでは
ないかと考えます。
3つめは
・個別に関わっている時間が多い
音楽療法では集団セッションであっても
必ずクライアント一人ずつに
関わる時間をとります。
個別に関わることで
その方にしっかりコミュニケーションがはかれますので
クライアントさんは満足感と安心感を
得られるのではないかと思います。
ということで
Aさんの行動の変化の理由として
考えられる3つの点をあげてみました。
このように音楽療法では
クライアントさんの行動の変化を促すことができます。
そのためには
「このクライアントさんには何が必要か」
ということを見極め
適正な個別目標の設定が必要になります。
しかし
適正な目標を設定するのは
簡単ではないかもしれません。
何を基準にしたらいいのか
わからないという方も
いらっしゃるかもしれませんよね。
でも大丈夫です。
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クライアントさんの行動から
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それでは
今日はこの辺で。
音楽療法セラピスト® 堀田圭江子