堀田圭江子/音楽療法セラピスト®、音楽療法士、産業カウンセラー
堀田圭江子
洗足学園音楽大学 声楽家卒業。高校教員を経て音楽療法士となる。
25年以上の音楽療法の臨床経験を生かし「音楽療法セラピスト®養成講座」を主宰。
音楽療法セラピストを志す後進の育成にもあたっている。

「音楽療法は1歩進んで2歩下がっても、いいんです!!」というお話しです。

昨日ですが、
ある高齢者施設でセッションしてきました。

10人前後のグループに
Aさん70歳代の男性がいます。

彼は
認知症は軽度で、脳梗塞を2回起こし片麻痺。
失語症のため、発語が不明瞭です。

今年の5月くらいまでは、
自分の名前をゆっくりと発語したり
太鼓も強い力で叩いたり
歌詞の音読も2行くらいはできていました。

私たちは
「Aさん、すごいですね。言葉もはっきりしてますよ。」
と褒めまくっていたのです。

しかし
7月の暑くなってきた頃から
発熱したり、本人拒否が続きました。

毎年
暑い季節は体調を崩していたので
予定通りといえばそうなのですが、、、、。

そして
夏が終わっても
参加する様子が見られなかったため
私はじめスタッフは心配していました。

そんなAさん、昨日、数ヶ月ぶりにセッションに参加したのです。

セッション開始前に
私は「Aさん、久しぶりですね。元気ですか?」と聞きました。

そうすると
思いっきり、首を横に振ったのです。

「え?元気じゃないんですか。」と私が言うと。

うんと頷きます。

「でもせっかく来てくれたんだから、声を聞かせてくださいよ。」
と粘ってみたのですが
Aさんは下を向いて何も言いませんでした。

そこで
セッション開始の時間になったので、
グループ全体に始めの挨拶をしました。

次に自己紹介に移り
「では、皆さんご自分の名前をおっしゃってくださいね。はい、こちらからどうぞ。」
と私はAさんの方を向いて名前を促しました。

すると
下を向いたまま「○ー○ー○ーし」とゆっくりと自分の名前を言ってくれたのです。

「Aさんですね、よろしくお願いします。」
私は答え、心の中では
『もしかして、このままいけるかも』と期待していました。

そして
体操や楽器のプログラムになりました。

しかし
Aさんは下を向き
体も動かさず、太鼓のバチも持たず。

さらに歌になると
前傾姿勢が強くなったため途中退室となりました。

音楽療法セッション後、、、、。

「先生、Aさん名前しか言わなかったですね。また元に戻っちゃったんですかね。」
とスタッフがため息混じりに言いました。

「うん、そうだね。名前しか言わなかったね。
でもさ、何ヶ月も休んでたのに、名前を言っただけでもすごいことだよね。
と私は言いました。

続けて
たしかに元に戻って発語が出にくくなったかもしれないけど。
またここから始めたらいいんじゃない?そのうち、またやる気を出すかもしれないし。」

と言うと、
「そうですよね、またここから始めればいいですよね。」
スタッフも元気を取り戻したようでした。

実は
Aさんのように、、、、

クライアントさんの中には
一旦状態が改善しても、また元に戻るような方もいらっしゃるです。

しかし
またやる気が出て
状態が改善することもあります。

なので
セラピストは、クライアントさんの状態が悪くなったからといって
落ち込むことはないのです。

とはいえ
クライアントさんの状態は
できればダウンさせたくないものですよね。

そんな思いを
現実にするためには
ちょっとしたコツがあるのです。

とくに
高齢者の方と接する場合に
知っておくと良いコツについて
音楽療法セラピスト養成講座「高齢者の音楽療法1と2」でお話しします。

それでは
今日も1日元気でまいりましょう!

音楽療法セラピスト 堀田圭江子