堀田圭江子/音楽療法セラピスト®、音楽療法士、産業カウンセラー
堀田圭江子
洗足学園音楽大学 声楽家卒業。高校教員を経て音楽療法士となる。
25年以上の音楽療法の臨床経験を生かし「音楽療法セラピスト®養成講座」を主宰。
音楽療法セラピストを志す後進の育成にもあたっている。

こんにちは。
堀田です。

さて本日は、老人ホームでの出来事をお話ししたいと思います。

とある有料老人ホームでセッションした時のお話しです。

70歳代の女性Aさんが音楽療法に初めて参加してくれました。

彼女は多発性脳梗塞の後遺症により発語がなく
顔の表情も平板になり
意思疎通が難しくなっており

危機感を感じた看護師の提案により
セッションに参加となった方です。

そこで今回のセッションでは

セッションの場に馴染めるかどうか
また
楽器や歌についての反応やらを
観察させていただくことにしました。

セッションはいつものように自己紹介や体操を経て
太鼓を叩くプログラムに入りました。

そして
彼女の目の前に太鼓がやって来た時
彼女は太鼓に右手を出しました。

「ほぅ、手が出たぞ。」と私は心の中で思いました。

隣でサポートしていた看護師さんも少し驚いた表情でした。

なぜなら
彼女は右手側に麻痺があったらしく
(堀田は前情報としては知らず)
また自力で体を動かそうという意思が今までにはなかったらしいのです。

さらに
太鼓のリズム模倣をやってみました。
(堀田が先に太鼓を叩き、次に彼女が真似して同じリズムを叩く)

するとどうでしょう。
左手で彼女は正確にリズムを刻むではありませんか!

「できるできる!!」

私は彼女に対して
「Aさん、できましたね。」と伝えると
彼女は少し表情をゆるめて応えてくれました。

その時の彼女は笑顔ではなかったものの
私を見る眼差しはしっかりと力強く
凛とした雰囲気を漂わせていました。

その後
歌唱のプログラムに移り
秋の季節の歌を歌い
最後に夕焼け小焼けを歌って次回の予告を告げると
彼女は顔をくしゃくしゃにしながら泣いていました。

そばに寄って
「Aさん、またいらしてくださいますか?」と声をかけると
さらに泣き顔になりました。

そしてミーティングの後に介護スタッフからこんな報告を受けました。

セッションに初めて参加したAさんですが
セッション後もしばらく泣いていたので
「楽しかったの?」と私たち(介護スタッフ)がたずねると
「うん」とうなずいていました。びっくりです。

それほど
彼女が感情を出したところを見たのは初めてとのことでした。

「よかった!!」
その報告を受けて、私は素直に喜びました。

初めて参加してくださったAさん、
セッションに参加する前はボーッとした表情だったのに
セッション後は涙を流すほどに変化され

そして
それを見ていた看護師さんや他の介護スタッフが
A さんの今までにない一面に接することができ、
そのこともさらなる嬉しさにつながりました。

心温まる瞬間です。

このような場面に出会える時、
「本当に音楽療法ってすごいなあ」と思えます。

というわけで、、、、
Aさんは次回のセッションから正式メンバーになりました。

今後のAさんの変化が楽しみです。

また
別の機会にAさんの変化をご報告できたらと思います。

音楽療法では

毎回このような場面があるわけではありませんが
地道にコツコツと丁寧にセッションをしていくと
嬉しいことや楽しいことに出会えます。

そのためには
しっかり対象者の理解をしたり
治療目標を設定する必要があります。

例えば
高齢者には高齢者に対する理解と知識を持って
治療目標をきちんと設定することが大切です。

もしもあなたが、
高齢者の施設でお仕事されていたり
ご家族に介護を必要とされている高齢者がいらっしゃったり
ボランティア活動や演奏活動で高齢者施設を訪問されたりしていて

もう少し今の状態(対象者やご自分)を改善したいと思われるのでしたら
ぜひ、「高齢者の音楽療法2」の講座にいらしてください。
>>>音楽療法セラピスト養成講座

高齢者に対する際の心構えとサポートのコツをお伝えします。
そして
音楽を有効に活用する方法も伝授いたします。

詳しくはこちらです。
>>>音楽療法セラピスト養成講座

では、今日はこのへんで。

音楽療法セラピスト  堀田圭江子