堀田圭江子/音楽療法セラピスト®、音楽療法士、産業カウンセラー
堀田圭江子
洗足学園音楽大学 声楽家卒業。高校教員を経て音楽療法士となる。
25年以上の音楽療法の臨床経験を生かし「音楽療法セラピスト®養成講座」を主宰。
音楽療法セラピストを志す後進の育成にもあたっている。

私の音楽療法の中では、クライアントに役割を持ってもらう。

例えば
「○○さんはどれがやりたいですか?」と複数ある楽器から選択してもらう。

そしていろんな楽器の担当を決める。

それから
楽器をみんなで演奏する。

何でもないことに思えるかもしれないが
合奏することは
各人の楽器を自己責任において演奏するという大役があるのだ。

 

一人かけても合奏は成立しない。

 

「俺、一人くらい抜けてもわからないだろう」は通用しないのである。

しかも
5、6人しかメンバーがいないため
一人の役割は重要だ。

 

ある高齢者のクライアントが
シンバルを担当した時
素晴らしいことが起こった。

 

いつもは活気がなく
車いすで、寝ているだけ。
一日をただぼーっと過ごしている。

 

そんな彼女だが
シンバルを担当してもらった。

セラピストが合図したら叩くという手はず。

「はい」っと合図すると

じゃ〜ンン!

とシンバルが響き渡った。

できるじゃん。

 

いつもやる気のない彼女が
私の合図でシンバルを鳴らしたのだった!

 

「わー、すごい。○○さん、すごーい」

 

他のスタッフの方が舞い上がる(笑)。

 

「○○さんのシンバルが、この曲の主役だから」
そういうと
彼女はますます笑顔ではりきったのだ。

 

その後も彼女の集中力はとぎれることなく
セッション最後まで続いた。

 

このように
各人に担当を決めることで責任感と緊張感が生まれる。
そして
誰かと一緒に演奏することで、他者への興味も持つ。

 

ひとつの曲を演奏することは
お互いの存在を認め合い尊重するということ。

 

このメリットを
どんどんセッションの中で活かしていきたいと思う。