- 堀田圭江子/音楽療法セラピスト®、音楽療法士、産業カウンセラー
- 洗足学園音楽大学 声楽家卒業。高校教員を経て音楽療法士となる。
25年以上の音楽療法の臨床経験を生かし「音楽療法セラピスト®養成講座」を主宰。
音楽療法セラピストを志す後進の育成にもあたっている。
ある特別養護老人ホームでの音楽療法のメンバーに84才の女性がいる。
彼女はアルツハイマー型認知症と診断されてもう数年はたつ。
彼女が初めてセッションに来た時驚かされた。
セッションのプログラムの中で「自己紹介」する場面がある。
○○さん、お名前をおっしゃってください。と私が言った。
「名は○○と言い、生まれは○○の何丁目であり、厳格な父と従順な母、幸子との間に生まれました。」
と言ったので、そこで
うんうん と私はうなずいた。
そしたら
「とはいうものの、今のような自由な意見を言えるような時代でもなく…」と延々と話は続いたのだ。
まるで歴史の授業を聞いているようだった(笑)。
おかげで、自己紹介に普段の3倍の時間を費やし
セッションの予定は大幅に変更を余儀なくされた。
この人は話が終わらない
そんな第一印象だったので、
それからというもの、話をふるのはタイミングなども考えながらやっていた。
そして、先日数回目のセッション。
○○さん、お名前どうぞ。
と、いつものように言うと。
「○○と申します。よろしくお願いします。」
えっ?もう終わり??
つい聞いてしまった(笑)。
にっこり笑って「はい」
あら。今日は短いのね。
そして、セッション中も以前のような
詳しすぎる話はなくなっていた。
セッション後、
スタッフみんなで「すごいねー。変わったねー。」と賞賛の声。
そうなんです。
彼女は周囲の状況を把握し、適応していたのです。
素晴らしい。
●頃合いを見計らって、話を切る。
●今自分の話はどのくらいのスペースを占めているのか?
●相手は困っていないか?
●相手は聞いているのか?
そんなことを私たちは普通に何気なくこなしているが
結構大変なことなのである。
でも、
84才の彼女はその機能を復活させた。
いやー、
音楽療法ってすごいです。