堀田圭江子/音楽療法セラピスト®、音楽療法士、産業カウンセラー
堀田圭江子
洗足学園音楽大学 声楽家卒業。高校教員を経て音楽療法士となる。
25年以上の音楽療法の臨床経験を生かし「音楽療法セラピスト®養成講座」を主宰。
音楽療法セラピストを志す後進の育成にもあたっている。

さて、
今日は、ある脳梗塞の後遺症の男性の家族から相談を受け、
アドバイスしてきましたのでその話をご紹介します。

 

クライアントさんは現在52才。
40代前半で脳梗塞に倒れ 失語症になってしまいました。

こちらの話は理解できるものの、自分からの発語はなく
首を振って自分の意志を伝える方法を使ってコミュニケーションしているそうです。

また
杖を使用しての自力歩行が可能で、身支度や食事は自立しています。

年齢も若いことから
高齢者のたくさん通う、ディサービスは嫌がり
ほぼ一日中、テレビを観て過ごす毎日だそうです。

今は、
訪問看護師と理学療法士以外の他人とは全く交流がなく
ちょっとしたことで不機嫌になり、ストレスが高い状態で
脳梗塞再発の恐怖に家族は神経質になっていました。

 

そこで
「家族はなにをしたらいいのか?」と相談されたのです。

 

私はまず状況把握から開始しました。

  1. 今の状態に困っているのは誰か?(家族か、本人か)
  2. 家族は最悪の状態になった時、何を怖れるか?
  3. 本人の好きな音楽は?好きなことは?
  4. 本人のメンタル的状態。問題点。

 

そして
家族からの回答を得ました。

  1. 困っているのは家族。
  2. 何もしてやれない冷たい家族と他人から思われるのが怖い
  3. R&B,パチンコ
  4. 今は音楽は一切聞かない。ストレス過多とあきらめ、なげやり、意欲低下の状態。

 

ということで、
この情報から今早急に解決すべきは
「家族のストレスの解消」「本人のモチベーションアップ」ではないかと考えました。

 

病気前の明るい家族に少しでも近づけるために、
家族が少しでも心地良く暮らせるために
第一段階としてできそうなプランを提案しました。

 

  1. 訪問看護師や理学療法士とリハビリする時に、本人の好きな曲をかけてもらう
    これなら、痛いリハビリも楽しくできそうです。
    そして、音楽の話題が看護士や理学療法士とできます。
    そこから、発語が促されることを期待します。
  2. 家族と一緒に本人の好きな曲を聞く。
    やはり、曲にまつわる思い出やエピソードなどを聞き出すきっかけになります。
    また、家族も本人の理解が深まります。
  3. 家族でカラオケなどに出かける。
    もちろん本人を無理矢理連れだすことはできないですが、
    1時間でもいいからつきあってと誘ってみる。
    孤立させないための行動です。
  4. 本人にひとつ家事の簡単な役割を頼む。
    タオルをたたむなどでもいいので、簡単にできることをお願いし、
    役割を持つ事で自信回復につなげる。
  5. 家族は自分の予定を優先させる。
    第一優先はお父さんではなく、自分のやりたいことを優先させる。
    介護から離れる時間を毎日作る。
    ストレスコントロールをすること。

 

以上5点を提案しました。

 

私が毎週彼らの音楽療法を実施できるわけではないので、
音楽療法的テクニックが必要なことや、専門知識が必要なことは提案せず
実践可能なことのみを提案させていただきました。

これで実践してみて
うまくいくところ・いかないところを検証し
次のステップに移行していけば、
家族も本人も心地良く暮らしていけると思います。

失語症のみならず、家族に病人や介護が必要な人がいる時は
その本人と家族の両方が同時に改善していくことが大切です。

自分たちだけで解決しようとせず、他人の力を借りて実践していくことも大事ですね。

 

この症例があなたの周りの人や
お仕事にお役にたてましたらうれしいです。
参考になさってくださいね。

 

それでは、また!

音楽療法士  堀田圭江子

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