- 堀田圭江子/音楽療法セラピスト®、音楽療法士、産業カウンセラー
- 洗足学園音楽大学 声楽家卒業。高校教員を経て音楽療法士となる。
25年以上の音楽療法の臨床経験を生かし「音楽療法セラピスト®養成講座」を主宰。
音楽療法セラピストを志す後進の育成にもあたっている。
「音楽療法で帰宅願望が減った認知症の女性」のお話しです。
ある特別養護老人ホームに入居している
80代の認知症の女性がいます。
午後になると「お願い、家に返してぇ」という訴えが非常に多くなり
介護職員さんたちが困り果て音楽療法に参加することになりました。
初回は,3名の少人数グループに参加しました。
そのセッションでは
前半までは、訴えもなくプログラムをこなしていました。
後半で歌の歌詞を読むプログラムになった際に
「おねがーい、家に帰りたい。帰してー」
という訴えが出ました。
私やスタッフが
「あともう少しで終わりますよ。頑張りましょうよ」
と声かけしても
「やだー。帰りたーい。帰してー」の繰り返し。
とうとう
途中で退出することになりました。
そして
2回目のセッションは
前回とは条件を変えてみる試みをすることになり、
10名前後のグループに参加となりました。
さて、
セッションが進行して
前回と同じように歌詞読みの場面になりました。
私やスタッフは内心
「そろそろ帰りたくなるかな」と予想していました。
しかし
どうでしょう。
その女性は
「帰りたい」の「か」の字も言わず
最後まで参加したのです。
「あの女性が帰りたがらないなんて、どうしたことでしょう」
私たちは、信じられない気持ちでした。
それで私たちは、
なぜ女性がセッション中に「帰りたい」と訴えなかったのか
その理由を探るべく3回目のセッションに誘いました。
今度も10名程度のグループです。
その女性は最初の自己紹介の時から
きちんとフルネームで自分の名前を名乗り
太鼓や歌のプログラム、全てをクリアしました。
もちろん
最後まで帰宅の訴えはありません。
「先生、いつもの○○さんじゃないみたいです」と音楽療法担当の職員さんが
驚いていました。
では
なぜあれほど帰宅願望の強かった女性が落ち着いたのか?
実は
その女性、帰宅願望の他にもトイレ介助の際には
介護職員さんの腕をつねるという行動も頻繁にみられたそうです。
また
常に周囲を見渡して、何かを探すそぶりをしていたらしいのです。
そういう情報から、、、、
「この女性は自分の居場所がわからなくなってしまい、
不安や不満が高くなっているのではないか?
そうであるならば
安心できる場所や時間を提供できれば、
帰宅願望も減るかもしれないな」
と私は考えたのです。
そして実際のセッションでは、
- 太鼓を叩くことでその女性が抱えていた不満を発散
- 太鼓の模倣では課題をクリアして褒められる
- 他の利用者さんが楽しんで参加している姿を見ることで「ここは楽しい所・安心できる所」と認識する
ということができたと思われます。
そのため
今後も
継続してセッションに参加して行く予定です。
このように
音楽療法では
認知症で帰宅願望の強い方をはじめ様々な方に
適応していきます。
もちろん
そのためには「なぜ、この症状が出ているのか?」という理由を探ったり
「これが原因かもしれない」という予想を立てることが必要です。
しかし
それにはちょっとしたコツがありまして。
そのコツについては
音楽療法セラピスト養成講座
「高齢者の音楽療法1と2」で詳しくお話しします。
認知症をはじめ
高齢者の方に幅広く適応する音楽療法の実際を
ぜひ、あなたにも知っていただけると嬉しいです。
では、
今日も1日はりきっていきましょう!
音楽療法セラピスト 堀田圭江子
「高齢者の音楽療法1」に参加された受講生の感想も参考にお読みください。
※Sさん 女性(29才)介護職
施設でレクをさせていただく機会があっても
どのように考えれば良いか分からず、手探りでプログラムを組み
行き当たりばったりになっているので、なんとかしたいと受講しました。
初めて参加させていただいてから半年たってしまいましたが、
また受講できて良かったです。
※Tさん 女性(57才)会社員
認知症の母のために具体的に音楽療法をどのように使うことができるのか?
どうすれば効果があるのかを知りたく参加しました。
堀田先生のお話がとてもわかりやすく一日あっという間でした。
また、高齢者の音楽療法2も受講したいと思っています。
※Wさん 女性(54才)介護職
ディサービスで音楽レクを担当する機会が増えています。
高齢者の状態に合ったプログラムを提供できないかと思い参加しました。
今回もテンポよく進みあっという間の一日でした。
明日からまた今日の内容を活かしていきたいと思います。
音楽療法のみならず介護にも十分に活かせる内容です。
ありがとうございました。
※Kさん 女性(51才)介護職
音楽プログラムを日々行う中で行き詰まりを感じていました。
しっかりとした理論、教育を受けたいと思い参加しました。
その場での質問も端的に答えてくださり納得できます。
もっともっと先生に聞きたいこともあり毎回楽しみです。
次回もよろしくお願いします。
音楽療法セラピスト養成講座は、
どの講座からスタートされても大丈夫です。
音楽の専門知識や、特別な準備は必要ありません。
10名の少人数制ですのでリラックスして参加でき、
知りたいことや聞きたいこともその場で質問可能なので、
より理解が深まります。
さらに現場実習にも参加することで
学んだことを現場で実践しながら
確かなスキルとして身につけていただけます。