- 堀田圭江子/音楽療法セラピスト®、音楽療法士、産業カウンセラー
- 洗足学園音楽大学 声楽家卒業。高校教員を経て音楽療法士となる。
25年以上の音楽療法の臨床経験を生かし「音楽療法セラピスト®養成講座」を主宰。
音楽療法セラピストを志す後進の育成にもあたっている。
「最近嬉しかったこと」をお話しします。
お付き合いくださいね。
ある高齢者施設で、認知予防のための音楽療法を実施しています。
そのグループは参加者が10名程度で
基本的には認知症がなく、自分のことは自分でできる方々です。
その参加者の中に
精神疾患があるため独居が難しいという方が
5人いらっしゃいます。
今日お話するのは
その5人の中の1人、
70代女性のTさんという方のお話しです。
彼女は
静かな感じの方です。
セッション中は
ニコリともせず、怒りもせず。
そして
自分から発言することもありません。
なので
私とのやりとりは
「Tさん、◯◯へ行ったことはありますか?」
とか
「◯◯は好きですか?」
などの質問をし、彼女はイエスかノーで答えるというような感じです。
でも
セッションには毎回参加されるので
音楽は嫌いではないのだなと思っていました。
そんな状況の中
つい先日、いつものようにセッションを終え私が帰ろうとした時です。
そのTさんが私の所に寄ってきて、、、、
「先生、今度の敬老会で私この曲を弾くことになって」と言い
1枚の楽譜を持ってこられました。
その楽譜を見ると、ある賛美歌でした。
私は
「Tさんピアノ弾かれるんですか?すごいじゃないですか。」
というと
Tさんは
「昔、ピアノ教えていたから。」
私
「そ、そーなんですね。知りませんでしたよー。」
と驚いている私におかまいなしに
「ちょっと、これ弾いてみて。」
と賛美歌の楽譜を私に渡すTさん。
私は、
「うわ、初見ですか」と心の中で思いながらも
脇汗をかきながら必死でその曲を弾きました。
するとTさん
「初見でそれだけ弾ければ、いいじゃない。」と。
そして
「実は、ちょっと練習したら右手が痛くなっちゃって。どうしたらいいと思う?」
と言われたのです。
私は唐突な相談に戸惑いながらも(苦笑)
「じゃあ、練習はちょっとお休みして、当日頑張りましょうか。」
と提案しました。
するとTさんは
「そうね。そうするわ。」
と何事もなかったかのように帰られました。
私は
実はTさんは
「プライドが高く、気難しい人で自分のことを話したがらない」
と施設職員の方から言われ、私自身も少し距離をおいていたのでした。
しかし
そして
次回のセッションからは、もっとTさんによりよいアプローチができると
思っています。
まとめ
クライアントさんを概念や思い込みで見ないようにすることは、
音楽療法では基本中の基本ですが改めてその大切さを実感しました。
本当に
クライアントさんを理解するには
その人に正面から向き合ってみて、自分で確かめるしかないものですね。
でもでも
それをやるからこそ
音楽療法は効果があるのだと思います。
その
音楽療法の詳しいお話しは
音楽療法セラピスト養成講座「音楽療法概論」でお伝えしますよ。