堀田圭江子/音楽療法セラピスト®、音楽療法士、産業カウンセラー
堀田圭江子
洗足学園音楽大学 声楽家卒業。高校教員を経て音楽療法士となる。
25年以上の音楽療法の臨床経験を生かし「音楽療法セラピスト®養成講座」を主宰。
音楽療法セラピストを志す後進の育成にもあたっている。

こんにちは。 堀田です。

本日のお話しは
「音楽療法で、そっと背中を押すサポート」についてです。

毎回私の体験談で恐縮ですが
本日もつい最近あったことをお話しします。お付き合いください。

先日
スポーツクラブの大浴場で、温泉(人工です)につかって
膝をのばしたり、マッサージしていました。

そうすると
近くに座っていたおばさまが
「あなた膝痛いの?」って話しかけてきたんです。

それで
「そうなんです。先日膝がグキッと脱臼みたいになってしまって…」と私。

「あらー、それは痛かったわね。
 私も膝を壊していてね。それで同じかなあと勝手に思ったから。」 とおばさま。

「そうなんですね。でも私はたいしたことないと思いますんで…」と

その場から立ち去ろうとする私に

「私はね、ずっと山登りしてたのよ。
 北アルプス知ってる?知ってるでしょ?うん、あそこ。」

「あそこにはもう何十回も行ったのよー。」と話しかけるおばさま。

「そうなんですね」と私は相づちをうったばかりに
そのおばさまの弾丸トークが始まりました。

北海道の大雪山登頂や東北の乳頭温泉で
吹雪の中買い物袋をかぶって露天風呂に入った話し。

沖縄などの暑いところより寒いところが好き。

お孫さんは小5年で、いつもは秋休みに一緒にどこかに行っていたけれど
今年はお友達とディズニーランドに行った。

今まで、日本や海外の行きたい所はすべて行ったし
今は行きたい所がない。ちょっと寂しい。

膝がもう少しよくなったら、
またどこかに行きたくなるかもしれないと思っている。

お正月はやる気を出さないと迎えられないと感じている。

スポーツクラブは2つ入っていて、家からどちらも5分以内である。

水泳も結構できる。

などなど

いつ終わるともしれないお話しに
のぼせる寸前になっていた頃
「ほたーるのひかーりー♪」が館内放送で流れました。

『助かった』(笑)。

その時おばさまが、
「あ、私、あなたに話してたら、今気がついたわ。」

「え?何をですか?」と私。

「膝のせいにして怠けてたけど、ほんとは山に行きたいんだわね。私。」とおばさま。

「じゃ、これから少しずつトレーニングですね!」と私が返すと

「そうね、ちょっとずつやることにしましょ。じゃ、また!」
といっておばさまはさっそうとお風呂を出ていかれました。

何はともあれよかったです。
自分のやりたいことが見つかったようですので…。

このお話しのように

答えは本人が知っているものです。

あなたも経験したことがあるかもしれないのですが
お友達に何かを相談する時を思い出してみてください。

どうしたらいいかをアドバイスしてもらおうと思っていたのに
悩みを話しているうちに

結局自分が答えを出していたってことはありませんか。

また
なんとなく答えはわかっているけど

「それでいいんだよ」って言ってもらいたいということありますよね。

それってまさに
「答えは自分が知っている」ってことです。

私の先ほどの話しも
私は、おばさまのお話しを、うんうんへーと驚きつつ聞いていただけなのに
おばさまは勝手に自分の中の答えに気づいていきました。

私は何も操作や誘導は加えていないのに。

実はこのことは、 音楽療法の中でも活用できます。

楽器や歌を歌うプログラムを行う時、
クライアントの反応があまりよくなかったり、反応が見られない時は
クライアントに「○○さん、やりますか?やりたくないですか?」と質問します。

必ず何かの返事があるはずです。
その返事(反応)をよく観察して待つのです。

ありがちなのは ○○さんは○○な人という思い込みです。

その思い込みで クライアントの行動や反応をセラピストが決めてしまうことがあります。

しかし

答えはクライアントだけが知っている。

クライアントが何を思っているのか、 どのような意思があるのかをいつも聞く姿勢をもち セラピストが勝手に決めつけないことが大切です。

もしかしたら音楽療法では、
クライアントの背中をそっとおすようなサポートは
クライアントに聞くことから始まるのではないでしょうか。

セッションや普段の生活にもぜひ活用してみてください。

では きょうはこの辺で。

認知症や失語症などの方への背中をそっとおす音楽療法は
音楽療法セラピスト養成講座「高齢者の音楽療法1」でお話しします。

音楽療法セラピスト  堀田圭江子