- 堀田圭江子/音楽療法セラピスト®、音楽療法士、産業カウンセラー
- 洗足学園音楽大学 声楽家卒業。高校教員を経て音楽療法士となる。
25年以上の音楽療法の臨床経験を生かし「音楽療法セラピスト®養成講座」を主宰。
音楽療法セラピストを志す後進の育成にもあたっている。
「おしゃべりになった、失語症のAさん」のお話しです。
ある高齢者施設に入所されている70代後半の女性がいます。
Aさんとします。
Aさんは15年以上前に脳卒中になり失語症の後遺症があります。
施設に入所してから10年以上になりますが、
彼女のしゃべる声を聞いた者はいませんでした。
そんなAさんが音楽療法に参加して
5年経過した頃、、、
セッション中に突然「りんご」と言葉を発したのです。
そして
スタッフの名札を見てその人の名前を読み上げたのです。
スタッフ全員感動と喜びに包まれ嬉しいセッションになったのですが、
その状態は、Aさんの居住フロアーに戻っても続き、
他のスタッフも彼女の変化に喜びました。
さて
そんなAさんですが、
最近のセッションではさらに発言が増えました。
例えば
他のクライアントさんが歌詞を読んでいる時。
「春が来た 春が来た」 と他のクライアントさんが読むと
「どこに来た」とAさんが言ったり。
Aさんの隣の人に
「お名前はなんですか?」と私が質問して
その方に答えてもらうためのヒントとして苗字を私が「◯◯」というと、、、
「よしこ!」と答えたり。
Aさんへの質問ではない場合も積極的に発言するようになったのです。
先日のセッション後のミィーテイングでも
「Aさん、以前は喋らない人という印象だったけど最近ではおしゃべりな人に変わったよね。」と私が言うと
他のスタッフからは
「彼女にとってこの場は、自分を表現してそれを受け入れてくれる自己表現の場になっているんだと思います。
今では、本当に楽しんで参加しているのが見ていてわかります。」
と音楽療法のスタッフの1員でもある
Aさんの居住フロアーの職員さんがおっしゃっていました。
というように
音楽療法では発語を促すだけではなく
発語が出た後もその状態が継続し、
さらに発展させていくことも場合によってはできます。
もちろんそれには
正確な対象者理解とクライアントさんに関わるスタッフ全員の
共通した治療方針のもとのサポートやアプローチが必要になります。
クライアントさんの正確な対象者理解については
「高齢者の音楽療法1」で詳しくお話しします。
こちらでご確認くださいね。