堀田圭江子/音楽療法セラピスト®、音楽療法士、産業カウンセラー
堀田圭江子
洗足学園音楽大学 声楽家卒業。高校教員を経て音楽療法士となる。
25年以上の音楽療法の臨床経験を生かし「音楽療法セラピスト®養成講座」を主宰。
音楽療法セラピストを志す後進の育成にもあたっている。

「音楽療法はクライアント理解から始まる」というお話しです。

私は以前、
自閉症の方たちとの音楽療法をしていました。

その時のことです。

高校1年の男子で
ほとんど言葉がなく
会話ができませんでした。

でも
セッション以外では、
ブツブツ独り言をいったり
走りながら大きな声をあげることがありました。

私は
その彼と何とかコミュニケーションをとろうと、あの手この手で頑張りました。

数ヶ月経って、
プログラムの指示には、
動いてくれるようになりました。

しかし
私は彼の行動の意味を
ちゃんと分かってはいませんでした。

なので、
音楽療法の効果も今ひとつはっきり出ていなかったのです。

そんな時
この本に出会いました。
自閉症の僕が跳びはねる理由―会話のできない中学生がつづる内なる心
東田直樹著

その本は
自閉症の著者が質問に答えるスタイルで、とてもわかりやすいものでした。

中でも
私を助けてくれた箇所をご紹介したいと思います。

質問:大きな声はなぜ出るのですか?

答え:
変な声を出している時には、
自分が言いたくて話をしているのではありません。

コントロールできない声というのは、
自分が話したくて喋っているわけではなくて、
反射のように出てしまうのです。

何に対する反射かというと、
その時見た物や思い出したことに対する反射です。
それが刺激になって、言葉が出てしまうのです。

止めることは難しく、無理に止めようとすると、
自分で自分の首を絞めるくらい苦しくなります。

自分では自分の声は平気なのです。

人に迷惑をかけていることは、分かっています。
僕も静かにしたいのです。

けれども、僕たちは口を閉じるとか、
静かにするとか言われても、そのやり方が分からないのです。

声はぼくらの呼吸のように、僕らの口から出て行くものだという感じです。

本文より部分抜粋

私は
この本を読み、納得しました。

そしてそれからは
高校生のクライアントさんとは、
自然体で接することができるようになりました。

というように、
音楽療法はクライアントさんの
理解なくして進めることはできません。

しかし
他人を理解することは、
簡単なことではありませんね。

クライアントさんを理解するには
クライアントさん本人に質問するのが一番ですが、
それが難しい時はできるだけ情報を集めたり、
その障がいや疾患についての勉強することが大切になります。

中でも
実際のクライアントさんとのエピソードや実例は、
セッションする上で強い味方になります。

ということで
自閉症や発達障がいの方との
実際の音楽療法のお話しは、
「障がい児の音楽療法1.2」でいたします。