堀田圭江子/音楽療法セラピスト®、音楽療法士、産業カウンセラー
堀田圭江子
洗足学園音楽大学 声楽家卒業。高校教員を経て音楽療法士となる。
25年以上の音楽療法の臨床経験を生かし「音楽療法セラピスト®養成講座」を主宰。
音楽療法セラピストを志す後進の育成にもあたっている。

こんにちは。 堀田です。

さて、本日は
「モチベーションを上げる音楽療法プログラム」についてお話しします。

私がセッションしている高齢者施設では
認知症の方も多くいらっしゃいます。

中でも
まだ自発的に動かすことができる体の機能があるのに
意欲がないがために認知症を進行させてしまっている方も少なくありません。

例えば

  • 下を向いたまま、顔をあげようとしない方
  • 自発的には行動を起こそうとしない方
  • 会話をしようとしても、首を振ることでしか応えようとしない方
  • 誘っても「めんどくさい」「やだ」「パス」などという方
  • 発語がほとんどない方

 

このような方々は、普段の生活でも受け身であり、
依存度がどんどん高くなる傾向にあります。

しかし
人間は、自分のことは自分で面倒を見るようにできているといわれており
実際、認知症といわれる方でも、できることは結構あるものです。

 

このような方々に「意欲的になっていただく」ためには、
どのようなことが音楽療法ではできるかということですが、、、

■まず
 はじめに考えたいことは
 「なぜ、意欲をもてないか?」ということです。

△例えば
 食事も自分で食べるより、職員さんが食べさせてくれる方が、
 何かのメリットがあるから自分で食べないわけですね。

△そうなれば
 他人におまかせになってしまうのも無理ありません。

△だとするなら
 クライアントさんに
 『自分でやる方がメリット(いいこと)がある』
 ということを知ってもらえればいいのです。

それを
音楽療法のセッションで、どのようなプログラムで提供するかが、
私たち音楽療法セラピストの仕事になります。

どのようなプログラムが考えられるか、、、

例えば 認知症で、発語が少なく、意欲がない。
ほぼ受け身的になっており いつもやることなくぼんやり過ごしている、90才女性。

このような方の場合は

●自己紹介(お名前を言う)

 他人が興味をもって自分を注目するという体験。
 この体験を通して、自分の存在を再確認します。

 もし、名前を言うのに時間がかかったとしても、
 自分のために他の人が集中していることは他の場面ではあまりないので
 とても貴重な機会になります。

●歌詞を音読する

 歌詞を音読することで発語する機会にもなります。

 歌詞が見えているのか、見えていても発語しない場合は、
 その理由をスタッフが理解する機会になります。

 また、いきなり歌唱するより、ウォーミングアップになります。

このプログラムができたらその直後に必ず賞賛をします。

名前を言えたら、
「〇〇さんですね。ありがとうございます。よろしくお願いします。」
 と言って褒めます。

また
歌詞を音読する際に、フルコーラスできたらそれは素晴らしいですが
難しい場合はクライアントの状況にあわせて、
1番だけでもいいですし、1行だけでもいいのです。

読めた後に「〇〇さん、ありがとうございます。頑張りましたね」などと
ねぎらってください。

■ここのところで注意したいことは
 「大人として賞賛する言葉を使う」ことです。

 じょーずー 以外の言葉で賞賛しましょう。

まとめると

クライアントさんのモチベーションを上げるには
できたところをきちんと賞賛する「正当評価」
「賞賛するタイミング」が大切だということです。

そして

このプログラムや課題を行うとどのようなメリットがあるかを
クライアントさんに明確に伝えることも重要です。

以上のことを意識して
日常のセッションやケアを実践してみてください。

よろしければ
その実践の効果や体験をコメントでお寄せいただけましたら嬉しいです。

あなたのお役に立てましたら幸いです。

では、今日はこの辺で。

音楽療法セラピスト 堀田圭江子